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What's Chiropractic? カイロプラクティックとは

外科医学じゃない。東洋医学じゃない

例えば、整体指圧とカイロプラクティックが同じ治療のように宣伝されたために生じた混乱。ここでは、治療方法・考え方、あるいは役割の違いを述べることでカイロプラクティックが科学的根拠に支えられた、独自の治療技術の一専門分野であるということを理解していただけるでしょう。

東洋医学じゃない。

 

文=山内匡範 

 

カイロプラクターは、治療に薬物と手術などの観血的手段を用いません。行うのはアジャストメントと呼ばれる手技と、温熱や寒冷などの物理的方法、体操、それに栄養指導などです。一部のカイロプラクターはハリやSSPなどの刺激療法を併用することもあるようですが、原則としては手技、すなわちアジャストメントが治療の根幹をなすものです。

 

カイロプラクターは、外科的処置について、重要な医療の位置を占めるものとしてその必要を十二分に認識しております。しかし、外科的処置に頼らなければならないレベルの患者のみがその対象になっているかについては、別の観点があります。つまり、現在手術の対象とされる病気のなかには、カイロプラクターの行う手技や指導によって充分回復するであろうものも含まれていると考えているからです。

 

例えば、腰痛のなかでももっとも厄介とされる椎間板ヘルニアなどでは、グレードによっては手術より安全かつ効果的なテクニックを、カイロプラクターは開発しております。かつて椎間板ヘルニアがどうしてかくも有名になったかといえば、あまりにも多くの人がこの病気にかかり、手術をした後の患者にその手術が有効であったとされる割合が低く、なおかつなかなか根治しなかったことが一因と言えましょう。

 

その治癒率の違いは、主に対症療法としての局所治療と、根本治療としての総合医療の違いにあると言えます。X線検査を例にとれば、外科医学では、障害部位の構造的変位を調べるためにレントゲン撮影をしますが、カイロプラクティックでは、そもそもサブラクセーションは、複合した生体力学的・生理学的不調と見なしておりますので、そこに構造的なものとは異なる、脊椎関節の機能的変位があるかどうかを重視するのです。

 

そのため、カイロプラクターの使用するX線装置は、患者の脊柱が通常の直立位をとるように設計されており、いわば動態撮影としてのレントゲンということになります。その必要は、脊椎分節の動きは非常に微妙精緻なものであり、わずか数ミリ単位の脊椎の不全が、神経系全体に影響を与えると、臨床上から結論を得ているからでもあります。

 

ただし、誤解のないようにしなければなりませんが、このようなX線検査などの鑑別診断は、あくまでアジャストメントを治療の原則としているカイロプラクティックですから、禁忌の確認や脊柱障害範囲の確定、および特定の症状に必要とされるテクニックの選定という、限定的な目的のために行われているのです。

 

以上からも、カイロプラクティックが、治療技術の一専門分野であるこるが理解できると思いますが、結論から言えば、カイロプラクターがその能力を充分に活かせる環境さえあれば、今までより安全で有効な治療方法として、さまざまな患者にとって治療法の選択の幅が広がり、福音となることは間違いありません。そうすれば、カイロプラクティックが医療の一部を補っていく役目を担うことになります。現実に、米国ではこのような患者を同一の病院内で、外科医とカイロプラクターが相談しながら治療にあたるケースも増えてきております。

 

さて、カイロプラクティックと、東洋医学のなかでも物理療法とされるハリや灸、整体指圧、それに接骨との違いはどうでしょうか。これらの治療法とカイロプラクティックは、人間の自然治癒力を念頭に置き、物理手段をその処置とする点で大変似通っております。

 

ハリ灸は、金属製の針やもぐさなどの独自の器具を用い、漢方概論と呼ばれる弁証法的な哲学概念を、その治療指針としている点で、カイロプラクティックとは大きな違いがあります。しかし、カイロプラクティックのテクニックには、これらの治療効果理論を応用発展させたものも含まれており、両者の相違は直接的な治療方法ともいえるでしょう。

 

整体指圧とカイロプラクティックは世間で同じ治療のように宣伝されたため、標榜する治療師の間でさえ混乱がありますから、カイロプラクティックの治療をすでに受けられておられる患者さんに、カイロと整体指圧が同じ物と思っておられる方が多いのも止むを得ないかもしれません。しかし、カイロプラクティックと整体指圧には大変な相違があります。

 

整体指圧では、東洋医学の経絡・経穴に基づいた「診断即治療」を行い、気・血・陰陽のバランスをとるなどといわれていますが、カイロプラクティックには、独自の理論に基づいた視診・触診・垂直線を使った姿勢検査・皮膚温度測定・X線検査があります。要するに、プライマリー・ケアとしての役割を担っているかどうかであります。

 

米国では、カイロプラクターになるのに一般大学で基礎科学を中心に2年、その後カイロプラクティック専門大学で4年以上の課程を修了することが義務付けられており、修学内容は、薬物と手術をカイロの理論と技術に置き換えれば、他の医師と相違ないところまできております。

 

したがって、症状があってカイロプラクティックの治療を受けにきた患者さんが、はたしてカイロプラクティックによって治すことができるのか、それとも専門医を紹介しなければならない病気を持った患者さんなのかを鑑別する能力がそこで教育されているのです。そういった意味では、米国のカイロプラクターの責任は軽いものではありません。

 

よく整体指圧とカイロを同意語としている治療院にありがちなのが、しっかりしたカルテをとらない、必要な検査をしない、納得できる説明をしないの「三無い治療」といわれます。カイロプラクターがきちんとしたカルテをとらないし、必要な検査を治療前にしない、ということは米国や他の国では考えられません。その意味では、日本におけるカイロプラクティックという名称に整体指圧の文字を重ねて表示された治療院のレベルは、推して知るべしといったところでしょうか。もちろんカイロプラクターはカイロプラクティックという名称しか使っておりません。

 

最後に接骨、つまり柔道整復師の行う治療ですが、これは骨折、脱臼、打撲、軟部組織の損傷などの外傷に限定されている応急処置、またはアフターケアがその施術範囲とされているもので、わが国独特のものといえます。 

 

カイロプラクティックが医療の一部として機能すること。

 

カイロプラクターがその能力を充分活かせる環境さえあれば・・・つまり、正統医学との違いを認識した上で、得意、不得意な部分をお互いに補っていくことができれば、さまざまな患者にとって、これまで以上に安全で、有効な治療方法として福音となるに違いありません。現にアメリカでは、同一の病院内で外科医とカイロプラクターが相談し治療にあたるケースも増えています。

re-bone 等身大のカイロプラクティック より抜粋

カイロプラクティック・マガジン【リ・ボーン】NCA出版部

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