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私の忙中有閑(所長のエッセイ)

シリーズ 元気に百歳人生 / 季刊誌「めいりん」秋 vol.4  発行所 明倫自治連合会から

2012年10月

 もう20年ほどになるが、生体力学と健康管理についての講演依頼があると、決まってラジオ体操の効能をご紹介してきた。関節の可動範囲が少ない、体のかたい患者さんが多いことを毎日の臨床で確認していたからだ。

 こうした私の拙い話が耳に届いたのか、8年程前に、文藝春秋の編集部の方より原稿依頼の電話があった。ラジオ体操について、原稿用紙3枚に書いて欲しいとの内容だった。

 1200字程度のボリュームなら学生の頃のレポートと同じだろうと簡単に承諾した。ササッと書きあげ担当者に送ったところ、即返送されてきた。封を開けると、学生時代に受けた添削でも経験したことがない、校正で真っ赤になった原稿があった。

 文藝春秋は菊池寛が創設した芥川賞、直木賞の主催社。日本を代表する出版社である。作家が執筆された1冊の1頁も、私のような素人の原稿用紙1枚に対しても、全く同じ視点で校正されるようだ。どうりで原稿用紙が真っ赤になるはずだ。

 改めて書き方に冗長な点や曖昧な表現がないか確認した拙稿であるが、ラジオ体操についての私見を短くまとめているので次にご紹介する。

ラジオ体操の勧め

 患者さんの身体に触れる都度、その筋骨格の硬さに対して閉口し、現代人の運動不足をまさに肌で痛感していた。

 私の指先に感じる身体の硬さや柔らかさというのは、筋肉の緊張状態だけではない。背骨や肋骨・四肢などの関節に、正常な可動性(関節の遊び)があるか否かを検知したときの感触である。

 本来人間は、関節を自分で動かすことができる範囲以外に、自分の意思で動かすことができない「関節の遊び」といわれる僅かに動く融通のきく部分がある。日常生活で支障なく身体を動かせるのは、このようなゆとりを持った機能が関節に備わっているおかげといえる。

 例えば、手の指の関節を、意識して指を動かそうとすると、曲げたり伸ばしたり二つの方向の動きしかできない。

 しかし、指を片方の手で挟んで優しく左右に回してみると、指先の関節が回旋するほんの僅かな動きを確認できるはずである。

 反対に関節の可動性が減少していたり消失すると、動作の際に痛みやこわばりを感じたり、身体に何らかの不調を覚えることがある。

 このようにして患者さんの関節の可動性を調べると、正常な関節の動きが減少している箇所を幾つも検出できることが多い。

​ だが、毎日ラジオ体操をされている方々は不思議に関節の動きがよろしいのである。

 理想的な関節の動きがあると、その骨に付着している筋肉が自由に動けるため筋肉も柔らかいのだ。私は人様を施術する立場になってラジオ体操の素晴らしさ、その効用を日々確認することができた。

 このような臨床体験から、身体の硬い患者さんにはラジオ体操をお勧めするのだが、どうも軽視されることが多いようだ。これは幼少の頃のラジオ体操がいとも簡単にできたからではないだろうか。

 「ほんとにこんなので身体のためになるのかな・・・。」身体の柔らかい小学生にとっては誰もが抱く想いだろう。

 私も小さい頃は毎日身体を精一杯動かして遊んでいたものだから、ラジオ体操など仕方なくやらされている退屈な体操という印象であった。

 しかし、年をとってから、そのような先入観でラジオ体操をすると面食らう。一例を挙げれば、しゃがみ込み片足の内側を伸ばす体操は、筋肉がちぎれないかという不安が一瞬よぎるほどである(私の身体が硬いだけか・・・)。

 こうした私自身の実体験が手伝っていることもあるが、ラジオ体操の真価を知るのは大人になってからである。

 生活の利便性を享受することで現代人の多くは身体を動かすことを忘れているようだ。暮らしが便利になったという理由だけで身体を動かす必要がなくなる訳はなかろう。

 ラジオ体操は本人のやる気さえあれば、どこでもいつでも可能である。毎日続けることで身体の柔軟性が改善されるだけでなく、様々な不定愁訴解消にも役立つはずである。どうやら年を重ねたから身体が硬くなるのではなさそうだ。

 文藝春秋の読者の方からは、「毎日ラジオ体操をするようになってからは肩こりがなくなった」等、嬉しいお手紙を頂いた。ラジオ体操による身体の変化は、毎日欠かさず行うことで実感がわくものだ。

 体感できる効果は人によって様々だが、本稿では、ラジオ体操による呼吸の改善について着目することにした。

 肋骨と背骨の胸椎、胸の前にある胸骨をあわせて胸郭というが、この肺を取り囲む胸郭部分の関節の動きが悪いと、横隔膜は自由に上下に動けない。

 試しに肋骨を左右から挟むように手で押さえ、息を吸おうと試みても、肋骨部分が膨らまない。可動範囲が制限された肋骨の影響で、横隔膜は下がり難くなり、息を深く吸い込めないのが分かるはずだ。

 極端だが、このような「浅い呼吸」が続くと、肺のガス交換が低下し、血液循環が悪くなり、全身の細胞に十分な酸素を供給できなくなる。機能が低下した細胞は、組織や内臓の器官に様々な悪影響を与え、老化が進むと考えられている。病気の予防だけでなく、アンチエイジングの面から考えても「深い呼吸」は大切だ。

 現代社会は、大人も子供も時間に追われ、ときにはストレスがたまりイライラすることもあるだろう。しかし、このような状況が長く続くと、交感神経の緊張が続き、アドレナリンの作用が高まり、血流障害やリンパ球の減少による免疫力の低下などが起こる。

 有難いことに、「深い呼吸」は副交感神経を刺激して、過度な交感神経の働きを鎮めてくれる。ストレスを感じた時は、ゆっくり深呼吸をして気分転換を図るのがお勧めだ。

 息を深く吸い込むときに主に働く横隔膜には、胸郭と胸部を区切るシリンダーのような働きがあり、肺や内臓を伴う上下運動を行っている。その回数は1日に約24000回といわれる。

 背中や胸郭の関節の動きが悪くなると、横隔膜のシリンダーとしての動きが妨げられ、さらにやっかいなことに内臓の動きまで悪くなるのだ。

 ヨガや太極拳などの呼吸法を重視した健康法が長い歴史を有し、今も多くの方に支持されている理由が、こうした横隔膜の上下運動による恩恵を考えると、なるほどと納得できる。

 先人の知恵を活かすために、まずは深い呼吸を妨げる原因を取り除くことが先決だ。肋骨を挙上する外肋間筋などの吸気筋群と、肋骨と胸骨を下げる内肋間筋など呼気筋群が動きやすく動けるように、硬い上半身をラジオ体操でほぐしてみよう。

​ 体操により肋骨の可動性が改善されると、肋骨に付着する呼吸時に働く筋肉が、自由に動けるようになる。すると軽く息を吸うだけで、驚くほど呼吸がしやすくなるのに驚かれるはずだ。

 読者の方から頂いたお手紙のなかには、「地域でラジオ体操が行われるようになった」と喜ぶ声があった。その理由は、皆で集まって体操することで、地域住民とのコミュニケーションが円滑になったというのだ。

 そういえば欧州では、夜遅くまで利用できる非営利のスポーツクラブが多くある。このようなスポーツクラブでは、一部の専従スタッフを除き、ほぼ全員がボランティアでクラブ運営にあたっておられ、地域住民の生きがいの場となっているそうだ。

 明倫地区にも、このように気軽に集える交流の場があれば、健康増進だけでなく、学区内での支え合いや一体感がさらに生まれることだろう。そして、みんなで元気な百歳を目指し、楽しみながら運動ができれば理想的だ。

私のカイロ治療体験記 

■『治らない両足の足底筋膜炎』大阪市 渡部様

■『いくつもの医療機関、治療院を経て』理学療法士 西村様

■『健康に留まらず、生きる喜びに向かって走る』 野々口様 

■『うづくまるひどい頭痛に悩まされて』 近藤様 

■『私とあんじゅ京都カイロプラクティック』 A.T, 

■『カイロとの出会いそして現在』 音楽講師 福井様  

■『カイロプラクティックでスタイルがよくなる?!』百貨店勤務 中村様  

■『良い出会い』 滋賀大学医学部5回生 依田様  

■『顎の痛みで不自由な生活を強いられた高校時代』関西外国語大学 児島様  

■『カイロ治療・・・膝の痛み』早稲田大学本庄高等学院応援部 石井様  

■『F. H. Lからと診断された腰痛』 臨床検査技師・国際細胞検査士 芦田様  

■『12年間悩まされた首の痛みが救われて』草津市 教師 坂田様 

■『カイロプラクティックの治療を受けて』京都市 講師 藤原様  

■『カイロ治療 私の場合』大阪市 宮城様  

■『晴ればれの記』作家 山田沙美様  

■『燃えて生きるために』美容業 滝本様 

 

私の見学日記 

「私の見学日記』南部カイロプラクティックセンター 南部 徹 先生  

 

所長の講演日記より 

■京都市立日野小学校で家庭教育講演 

■学校法人京都南カトリック学園 青谷聖家族幼稚園で講演 

■ NCA(日本カイロプラクティックアカデミー)北陸本部セミナー 

これまでの主な講演 

 

私の忙中有閑(所長のエッセイ)

■人権概念の生成過程と東アジアを中心とした現代の人権問題について考える

■BIS(自己資本比率)規制の目的と手段について想う

■現代社会が生み出した運動不足と不定愁訴 ーラジオ体操の勧めー 

■医療におけるグローバリゼーション

■シリーズ 「元気に百歳人生」 2012.10月発行 明倫自治連合会、季刊誌「めいりん」秋 Vol.4より

■「明倫学区ボウリング大会」 2013.4.7 / 明倫自治連合会発行、季刊誌「めいりん」、半世紀ほど前の祇園祭の写真、六角堂の鳩 

■京都市中京消防団第33回親睦ボウリング大会 2015.9.6 

 

原稿ーNCAカイロニュースへ 

■貴方の知らないことは見過ごしてしまう- NCA西日本本部ニュース『フラクタルWEST』98.5月号より 

■グローバル化時代の健康政策 -NCAカイロニュース巻頭文(1997)より- 

 

取材・掲載記事より 

■文藝春秋 「大養生 百歳人生の健康読本」平成15年7月15日発行

■日本画報‘96.1月号より

■杏林予防医学ニュースVol269より

 

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